働く母親が直面する「賃金格差」、80年代から縮小せず 米研究

働く母親が直面する「賃金格差」、80年代から縮小せず 米研究

CNN 2018.03.16 Fri posted at 17:05 JST

ニューヨーク(CNNMoney) 米国の働く母親が受け取る賃金は子どものいない女性に比べて低く、その格差は1980年代から全く縮小していないことが、社会学者らの研究で明らかになった。

米マサチューセッツ大学で社会学を研究するジョヤ・ミスラ教授は、学術界での就職を目指す大学院の女子学生にこんなアドバイスをしている。「子どもがいることを伝える必要はありませんよ」

子どもがいる女性といない女性の間には、長年にわたる賃金格差があるからだ。

ミスラ教授がこのほど経済学者2人と共同でまとめた研究によると、子どもが1人いる女性といない女性の賃金格差は86~95年の9%から、2006~14年には15%に拡大した。

子どもが2人いる場合は13%、3人以上の場合は20%の差がついたまま、80年代から変化していない。

これはミシガン大学が68年から5000世帯、1万8000人の収入を追跡したパネル調査(PSID)のデータを使い、学歴や職種、職歴を調整した数字だ。

女性が子どもを持つことで収入が減る「育児ペナルティ」は、「男性1ドルに対して女性81セント」とされる性別賃金格差の大きな要因になっている。一方、男性では子どもがいる場合、勤務時間の差を考慮しても、逆に賃金が上がるとの研究報告がある。

子育て中の母親全体のうち仕事を持つ女性の割合は、1975年に47%だったが2015年には70%に増えた。それでも育児ペナルティが減らないのはなぜか。

米国はスウェーデンなど他国に比べ、有給の育児休暇や保育費用の補助など、子育て支援策の整備が進んでいないからだと、研究者らは指摘する。

ミスラ教授は「育児ペナルティを軽減するには保育費用の一律補助が最も効果的だ」と強調する。

職場側に有給の育児休暇制度を義務付けることも対策の一つだが、休暇期間を昇格に必要な勤続年数に算入するかどうかなど、課題は残る。

育児休暇を取ったために差別を受けたとして、女性が職場を訴えるケースもある。訴訟の件数は近年急増しているものの、ミスラ教授によれば氷山の一角にとどまっている。

雇用機会均等委員会(EEOC)の予算不足が解消して調査体制が充実すれば、職場側の意識も変化するはずだと、ミスラ教授は指摘している。

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